脱毛の意外な事実
このように国民の金融資産ストックのリターンを犠牲にして投資を拡大し、生産・雇用規模の持続的成長をめざすという伝統的価値創造パラダイムは、完全に行き詰まったのである。
4、4T自動車とマイク口ソフ卜。
「よいものを安く大量に」生産する経営努力を通じて、日本を世界ーの輸出大国、世界第二の経済大国に導いたのは、大メーカーであった。
それを代表する優良企業の1つとして、T自動車をあげることができる。
一方、かつては金城湯池であった自動車や電機をはじめとする製造業の基幹部分を日本の低収益戦略に侵蝕されたアメリカの大企業は、業績悪化、株価の低迷に見舞われた。
そして1980年代を通して大規模なM&AやTOBの洗礼を受けて、事業内容の大幅なリストラクチャリングに入っていったOその苦悩の中から見出した答えが、日本からの低収益競争の懸念がなく高い付加価値が期待できる情報、ソフト、サーピス産業への脱皮であった。
その努力が実を結んで、90年代になるとアメリカ企業およびアメリカ経済は、再び活力を取り戻した。
製造業分野における日本企業の台頭が、それを推進した大きな要因であったといえよう。
2000年の大統領経済報告によれば、最近のアメリカの経済成長の23割はIT関連産業の伸びによるものであり、高い雇用の伸びにもつながっている。
このような新しいアメリカを代表する優良大企業のっとして、Mをあげることができる。
表236は日米経済の発展段階を代表する、T自動車とMの経営パフォーマンスを対比したものである。
売り上げでみると、TはMの約7倍だが、税引利益ではマイクロソフトがTの1、5倍になっている。
また、売上利益率はTの2、8%に対してMは実に31%、「0EもTの5、3%に対してマイクロソフトは27%になっている。
資本の生産性という点ではMが5倍ほど高いといえよう。
一方、従業員数をみると、Tは18万人、Mは2万7、000人で、Tが約7倍大きい。
その結果1人当たりの売上高はほぼ同じになっている。
ボトムラインの人当たり税引利益でみると、MはTの11倍になっている。
資本の生産性の違いよりも、社員1人当たりの生産性の違いのほうがもっと大きい。
このように、TとMの経営の違いは、資本リターンの差というよりも人的資源の使い方にある。
もし人間こそが価値の究極の生産主体であり、それが日米両国とも今や稀少資源になりつつあるとすれば1人人の人間の潜在可能性をどのくらいヲき出すことができるかで、経営は問われるべきだといえよう。
資本のリターンは単にその結果にすぎない。
ところが利益は二の次でよしとしてきた日本的経営のパラダイムからいえば、個々の社員の持つ可能性をどのように発揮させて、市場価値につなげるかを工夫するインセンテイブは乏しかった。
むしろ売り上げを増やすことが最重要視されてきたのは、売り上げこそが日本国にとって必要なハードカレンシーの獲得と直結していたからである。
したがって、Tの経営者は利益もさることながら、どうやって対米輸出を伸ばすことができるかを重視した経営に腐心してきたといえよう。
ところがマイクロソフトにとっては、アメリカのためにドルを稼ぐことはほとんど意味がなく、売り上げは単なる中間項にすぎない。
あくまでも少ない人聞を最有効活用して、利益につなげることが経営の目的なのである。
団GEにみる企業経営の進化5、13代のトップ経営者。
上に紹介したTとMの経営の違いは、日本とアメリカの経済発展段階に対応した、企業の行動パターンの違いと考えることができる。
そういう意味で、アメリカ企業についても少し長いタイムスパンでみれば、時代の変化につれて経営の中身は大きく変化してきたのである。
アメリカを代表するもうつの優良企業であるGEの経営の変遷によって、このことをみてみよう。
表237はGEの1960年代から最近までの3人の経営者のパフォーマンスを比べたものである。
61年から70年はフレッド・ポーチがCEO(最高経営責任者)であった。
アメリカが圧倒的に強かったこの時代のパラダイムは、やはり規模の成長であった。
GEにとっても売り上げを伸ばして、雇用を増やすことが非常に重視された。
したがってアメリカのGDP平均が7、2%成長するなかで、GEの売り上げも年率7、2%の成長を達成した。
まさにGEはアメリカそのものであった。
その間、収益性はというと、売上利益率は5、1%から3、8%に落ちて、JOEも14、8%から12、6%に下がり、株価もあまり上がらなかった。
しかし、売り上げは伸び、従業員数も28万人から40万人に大幅に増えた。
アメリカも規模の成長を追求した時代で、収益性や株主価値はそれほど重視されなかった。
次いでGEを率いたのは、名経営者といわれたレジ・ジョーンズであった。
この時代はアメリカ経済が成熟し、日本とヨーロッパ企業がアメリカ市場に攻め込み始めた時期であった。
そうした時代にしては、ジョーンズは考えられる最善のパフォーマンスをあげたといえる。
インフレの高まりもあってアメリカの名目GDPは年平均10、6%伸びたが、GEの売上成長率も11、2%と、ほとんどGDP企業であった。
また売上利益率は6、1%に、JOEも19、5%へと高まり、老大国GEにしては素晴らしい業績を保った。
しかし同時に、大企業病の兆候もあちこちで表面化し、従業員数も37万人を抱えていた。
1981年にその後を引き継いだのがジヤツク・Wである。
彼は2001年まで会長職にあって、株主価値的な経営によってGEをよみがえらせた。
最初の10年間はGDPが7、4%増えるなかで売り上げは7%しか増えなかったが、収益性は大幅に改善された。
売上利益率は6、1%から8、4%に増え、JOEも20、1%へさらに高まった。
その後、2223%になっている。
しかし、Wの経営パフォーマンスの中で最も注目すべきは、従業員数の変化である。
37万人で引き継いだ従業員規模を、その後の10年間で23万人まで減らしたのである。
Wに対する日本での大方の評価は、JOEを高めるために社員を3分のも首にしたというものであった。
しかし、アメリカを含めて先進国の労働人口が減少に向かうなかで、最も貴重な経営資源は人間だという視点に立てば、Wはまさにその有効活用を重視した経営を進めてきたといえよう。
より少ない人的資源をより有効活用するために、不必要な人聞をGEがいたずらに抱えることは許されないと考えたのである。
Wは最初の10年間で税引利益を約3倍増やしたが、それをピーク時の6割の人間で創り出すように変えたのである。
Wが預かった従業員1人当たりの価値創造額が、大幅に増えたことを意味する。
それこそがWにとっては経営者としての社会に対する責任だということになる。
もちろん、Wは何万もの社員をレイオフして路頭に迷わせたのではない。
それどころか大部分のケースでは、リストラクチャリングの対象になる部門の社員を日たりとも路頭に迷わせることなく、それらの事業をより必要としていた内外の優良企業に適切な条件で引き取ってもらったのである。
5、2Wの経営リストラクチャリング。
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